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妾(わたし)の感想日記

徹頭徹尾女(自分)目線の感想文

 『女の友情と筋肉』

前回ルミネCMについて書いたついでに触れた『女の友情と筋肉』ですが、

『女の友情と筋肉』KANA | ツイ4 | 最前線

ユウヤみたいな「いつの間にか女の家に住み着く」というスキルを持つ男を、私は都合4人ほどリアルで知っていますが、これは遺伝子に組み込まれた男子のメジャー生存戦略の一つなんだと思っています。配偶行動における「スニーカー」などと同じように、名前を付けて公式に登録すべきではないか。

それはつまり、女子の「何かの世話をしたい」という、本来子どもに向けるはずだった「世話欲」を、本人の知らぬ間に自分に向けさせるというたいへん合理的なストラテジーです。もっと研究されてしかるべきだ。

 

ところでこのマンガ、『ダ・ヴィンチ』さんの著者インタビューによれば、もとは女子向けLINEスタンプだったそうです。

それが結果的にマッスルという形になった経緯を以下のように説明されていますが、ここには現代のアラサー超え女子が、自分たちについて語る言葉をなかなか持てないという状況がよく表れていると思います。

筋肉ムキムキOLがかわいい! 『女の友情と筋肉』KANAインタビュー | ダ・ヴィンチニュース

――なぜ筋肉のスタンプを……?

【KANA】「女性同士で気持ちが伝わるものにしたいと思った結果、気がついたら筋肉になっていました」

――……?

【KANA】「女性がよく使う、ふわふわした白くて丸い感じのスタンプだとありふれていますし、そういったスタンプは男性に向けて送るのであって、 女性同士のもっと正直なコミュニケーションやはげまし合いに使えるスタンプを作りたくて。それで、なんとなく浮かんだのがマッスルでした(笑)。試しに少 し描いてみると自分でも元気が出る感じがしたので、そのまま勢いで一気に40個描き上げました」

メディア経由で「女子はこういうのが好きなんだろう」と与えられる記号や言葉、モノは、おしゃれ、ピンク、かわいい、ゆるふわ、優しい感じ、てなものが強固な観念連合を組む世界です。

でも一社会人としての生活というのは、おしゃれもピンクも可愛いもゆるふわも正直何の役にも立たない場面の連続です。

生活と社会に追われると眉毛を抜く暇も気力もないときもありますが、そんなものはボーボーでもとりあえずは何とかなるのが大多数の生活領域であり、事実何とかしている人々が、現実のアラサー以上の女子の多数を占めるのです。

そういう脂汗を流しながら生きる生活実感を持つ女子にとっては、ピンクとか白のふわふわした世界は、なんかこう遠いものに思えてくるのですよ。それより、オラ来いやァァと叫びながら生きて精神的にムキムキになった自分を表現する言葉や記号がモデルが欲しい。

でもメディアはそれをほとんど供給しません。だから、生活や社会と闘って勝利を勝ち得ている女でも、これでよいのか?といつも自問せざるを得ない。

がんばっても大丈夫、受け入れられる、愛されるということが自明であるような世界が欲しいのです。

それを実現しているのが、『女の友情と筋肉』の世界です。

心身共にムキムキの女子だけれども、それが楽しみたいように楽しみ、パートナーを得、悩むべきところに悩むことができる理想郷なのです。

 

しかし現実の世界において、メディアにはムキムキな女はなかなか出てこない。

もしムキムキな女とピンクやふわふわが組み合わされたり、彼氏とラブラブだったりしたら、それはだいたい奇形的な組み合わせであり、笑いでその違和を解消するか、注釈が必要とされます。

ムキムキ【でも】愛されている場合、顔はまずまずだから、料理がうまいから、男には尽す可愛い女だから、…みたいな注釈がないと、納得されないのが現代日本メディアにおける女です。事実、上のダ・ヴィンチのインタビュアーは、上の引用に続いて「彼女らの彼氏たちはなぜ彼女が好きなのか」と作者に問う。ムキムキ女に男がいるという状態は、彼らの言語・思考体系の中では不自然であり、説明を要する事柄なのです。

こんなことでは日本女子は、「努力して苦難に勝利してもムキムキになったら世界から愛されない」と、社会からこぞって説得されているようなものです。偉大な業績を上げているスポーツ選手でさえ、メディアにおいては「でも女の子だもん!」みたいな描き方をされる。めんどくせぇなほんとに。

 

とはいえ、読み手・受け手は闘う生活者ですから、メディアの女子像が正しいのではない、あっちのほうが足りないのであると、もうだいたい気づいちゃってるんですよね。だから、ルミネCMやその他の炎上がある。そういや、「文庫女子」フェア炎上事件なんてのもあった。

文庫本をファッションの一部に? 「文庫女子」フェアの狙いとは - ITmedia eBook USER

紀伊國屋渋谷店の「女子向けフェア」に予想外の批判が集中 - ライブドアニュース

こんなの25年前だったらスルーされてたかもしれませんが、最近は「はっ死ねば?」と受け手の鼻息で飛ばされてしまうのです。

「女子」を「おしゃれ」「恋愛」「かわいい」とかのカップリングだけで解釈しようとしたら、女だって男と同様おしゃれもモテもかわいいも動機にならない領域を持っていて、本を読むなんてその最たるものだという、周囲を見回してみればきわめて当たり前にわかるはずのことを見逃し、多くの人を不快にさせてしまった。

 

それにしても、広告・編集・書店もろもろの人たちは、この複雑な12世紀に、属性についての観念連合に固執するという、25年間の若者向け週刊誌みたいな感覚から抜けられないんだろうか。

「今年の新人は●●型!」みたいなのもそうだけど、当の若者に冷笑されると思わないのか。

 

話が面倒になってきたのでまとめますと、私は下の柴田の意見に心から賛成です。

sai-zen-sen.jp