21世紀の怪盗ルパン 『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』(2)
『アバンチュリエ』既刊読破の余韻に浸ったまま、次巻春発売予定とか待てねーよーという荒れ狂う思いのままに作ったこのブログですが、書いたらスッキリしたので1か月間放置してしまいました。よくあることです。
そのあいだに『修道士ファルコ』の新作が1年半くらい前からドシドシ出ていることを知って新たに大歓喜。
さらに今、hontoのクーポンで何買うかーとサイト開いて知ったんですが、荒川弘がアルスラーン戦記書いてるんですってね。
潜在意識下の希望が期待以上にどんどん実現していくのを目にするにつけ、やはりお迎えが近いのかもしれないという強まる思い。だがしかしこれらの行く末を見届けるまで死ぬわけにいかない。
いやあ日本ってほんといい国ですね。
そんなこんなで前回、『アバンチュリエ』について何を続けて書こうとしてたんだったか全く忘れてしまったわけです。まあルパンが若い細身のイケメンで嬉しかったということを百回くらい書いてもいいのですが、自分的には。
怪盗ルパン伝 アバンチュリエ(3) 奇巌城・上 (ヒーローズコミックス)
- 作者: 森田崇,モーリス・ルブラン
- 出版社/メーカー: 小学館クリエイティブ
- 発売日: 2014/08/05
- メディア: コミック
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今読みかえしてますが、つくづく骨入ってる仕事ですねえ。
「ルパン・サーガ」を実現するという筋を通すためには、いまいち引きが弱いエピソード(ハートの7とかユダヤのランプとか)を、知名度高い名作(奇岩城とか)の前に持って来ざるを得ないわけで、いったん打ち切りの憂き目にあったのもこのためでしょう。
でも作者は、自分の筋を通す仕事をすることに決めたのですね。それで新たな掲載先をtwitterで募集する運びに。それだけこの計画に熱があり、ルパンものの面白さに裏打ちされた自信があったのでしょう。
内容もさることながら、人のそういう仕事っぷりを見るのは気持ちがいいです。
その筋があったればこそ、ポプラ社ルパン読者であった自分が感動したこと、それは(繰り返しになりますが)彼がだいぶ「おかしい人」であることが、自然にストーリーに組み込まれていたことです。個人史に裏付けられた、作中一貫したキャラクターとして。
危険に嗜癖し、一種幼児的な自己肯定感を持ち、過剰な承認欲求と世に容れられない性癖(盗癖)のあいだで揺れ動く不安定な人間性。100年以上前に造形されたとは思えない複雑さです。原作者は元純文学作家だったそうですが、だからこそこんなキャラでも扱い得たのかなあと。意識下の欲望とか異常心理とか、あのあたりの時代の文学って得意でしたよね、たしか。うろ覚え。
そのへんのルパンの複雑さは、主にルパンの女関係、とくに「まともな女」へのコンプレックスに発揮されていると思うのですが、『アバンチュリエ登場篇』一巻ではネリーさんとの再会で印象的に描かれていました。
クロチルドについてもなあ。今後出てくるヒロインのことを考えると、だいぶ穿ってみてしまいます。なんか、お綺麗な女を堕落させる快楽みたいの感じてないですか?とか。
あんまり覚えてないのですが、ポプラ社版、女関係はレイモンド以外ほとんど印象に残っていません。でもルパンのキャラの複雑さが際立つのはやはり女関係だと思うのですよ。上のようなキャラ立てとか女遍歴を踏まえてこそ、「ルパンの結婚」だって面白く読めるでしょう。さいとうちほ版も可愛くていいんですけどね、あれにはもっともっとポテンシャルがあるはずなんだ!
ですから、ソニアさん以降も『アバンチュリエ』にはそのへん頑張っていただきたい。それもエロく、できる限りエロくお願いしたい。
そして最終的にはエロエロしいカリオストロ伯爵夫人を心待ちにしています。あれは記述の仕方が微妙で小説としては何なのですが、稀に見るハーレクイン的ポテンシャルを含め、凄く「持ってる」原作だと思うのですよ。
ちなみにある編集者の言では「女子のエロスはときめきなのよ」ということですので、それも踏まえてぜひよろしくお願いいたします。